明け方の空は曖昧な色で、新宿二丁目のぼんやりとした雰囲気によく似ている。60年代にここにゲイの街の兆しが生まれた。70年代初期には初めてのゲイの雑誌「薔薇族」が創刊され、「薔薇族」はゲイの街の代名詞となった。
昼間は学校やオフィスビルが並ぶありふれた街が、この時間になると異なる色彩に包まれる。書店やDVD販売店の壁には、自作の歌詞や同性愛映画のポスターが張られ、カラフルな服に身を包んだ男性たちが、バーで歌を口ずさんでいたり、カフェでおしゃべりやキスを交わしたりしている。
日本で、あるいは世界でも屈指のこの「ゲイの街」は、独特の「酒文化」を展開している。驚いたことに、新宿二丁目はゲイたちの天国であるだけでなく、日本の芸能人やシンガーソングライターたちが、発想を得たり気晴らしをしたりするために来る場所でもあるのだ。
人気歌手の浜崎あゆみ、女優の深田恭子、巨乳スターのMEGUMI、アイドルの安西博子などはみなここの常連客なのである。早朝の新宿は、こうした女性たちも加わって、ますます神秘的で不思議な場所になっている。
森山大道先生が「東京という大都市を構成する他の幾多の街が、戦後五十年余りの時間のグラデーションをすっとばして、見る見る白くサニタリーな風景となり果てているのに比して、新宿はいまだに原色の、さまざまな時間の痕跡を内包している。」と語っているように、
一人の異国人にとって、日本に来たばかりの頃も、仕事を持って定住してからも、新宿は永遠に心惹かれると共に恐ろしくもある、複雑な気持ちを感じさせる場所である。
昼間は気晴らしのための娯楽施設や特色のあるレストランが並び、日本特有の雰囲気をたたえた魅力があるが、夜になると歓楽街と享楽の雰囲気に転化する……ネオンが怪しい光を放ち、様々ないかがわしい風俗の店が輝き始めるのだ。
新宿西口の巨大なオブジェ「新宿の目」の前にたたずむと、立体交差する道路の向こうの空が次第に白み始める。新宿は千変万化する街、混沌とした社会の息吹きが漂う街、生命力と頽廃に満ちた街だ。夜と昼とが正反対の表情を見せる同じ空の下にあって、私はふとその呼吸を感じた。
それは実に確かで、実に力強いものだった。初冬の朝焼けが空を染める、静かで透明な朝だった。(完)(情報提供:東京流行通訊)
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