■ゲイニュース:性的少数者の診療所「しらかば診療所」
ゲイ(男性同性愛者)などの性的少数者を主な対象とする日本初の診療所「しらかば診療所」を、2007年に東京・新宿に開設した感染症専門医の井戸田一朗さん(42)に、取り組みを聞いた。
――どのような経緯で開設されたのですか。
「私自身がゲイの医師であり、性的少数者の医療や福祉、教育を支援する団体AGP(同性愛者医療・福祉・教育・カウンセリング専門家会議)の副代表を務めています。メンバーは性的少数者当事者や、それを支持する人たち、医療・福祉の関係者です」
「AGPの活動の一環で、性的少数者の心や体、家族関係に関する電話相談を以前から行っているのですが、体の相談を受けていて分かったことは、明らかに病院に行くべき状態なのに、医療者からの偏見を恐れて受診できない人が多くいたことです。自分自身のセクシャリティーを受け入れられず、悩んでいる人も多くいます。性的少数者でも、気兼ねなく受診できる医療機関が必要だと強く感じていました」
――海外には、そのような医療機関はあるのですが。
「2001年に米国の公衆衛生の医学雑誌に、性的少数者を対象にした医療機関の紹介記事が載りました。米国には7つあり、最も有名なのがボストンにあるフェンウェイコミュニティ・ヘルスです。AGPのメンバーで、そこへ見学ツアーに行き、現地スタッフから、日本にも同様な施設が実現するように力強く励まされました」
「その後一時期、私は感染症の専門家としてWHO南太平洋事務局に勤務し、フィジーに行っていました。仕事は自分に合っていたので、そのままWHOに残ろうかとも思ったのですが、やはり自分がゲイであることを大切にしたかった。性的少数者のための診療所をやらないままではきっと後悔するし、自分がしなきゃ誰もやらないだろうと思って、日本に戻りました」
「でもWHOでの経験などが買われて、世界各国が資金を出して作った『世界エイズ・結核・マラリア対策基金』の支持を決定する技術審査委員に選出され、年1回、事務局があるスイスのジュネーブで開かれる審査会合に出席しています。基金には日本も1600億円以上を拠出してきました。途上国から集まる3大疾患対策の申請書を、世界から集まる約40人の審査委員が、中立性を守りながら集中的に審査し、支援の可否を決定します。日本人の審査員は2人で、1人が私です」
――国内では例がない診療所ということで、経営に不安はありましたか。
「普通は開業する時、医療コンサルタントに相談して、その地域にどれくらいの患者がいるのか見積もってもらいますが、性的少数者を主な対象にする診療所では、そのような見積もりができません。果たして経営が成り立つのか、とても不安でした」
「でも、HIV陽性者に必要な施設という点では自信がありました。全国にHIV診療拠点病院がありますが、通常、診療は平日の昼間だけです。会社員だったら、受診日は何らかの理由を作って仕事を休まないといけません。ここは平日は夜9時まで、土日も夕方まで診療しています」
「病気は精神状態と密接に関わりますが、一般の診療所ではゲイやレズビアンであることは言いにくいのです。この診療所は、患者さんはインターネットや口コミで情報を得てやってくるので、診療のハードルは最初から低い。自分も、医療者であると同時に、ゲイならではの視点で患者さんの話に耳を傾けます。まだまだ開設にかかった借金は返せませんが、患者さんは北海道から沖縄まで全国からやって来ます」
――診療所の概要を教えてください。
「診療科は内科、形成外科、皮膚科、精神科、婦人科があるほか、臨床心理士によるカウンセリングルームも設けています。HIV感染が判明すると、本人は同時にいろいろな問題をつきつけられます。性的少数者全般に言えますが、家族や社会との関係で悩み、うつ病などの精神疾患や自殺、アルコールやたばこなどの薬物への依存が多い。心の健康はとても重視しており、4人のカウンセラーがいます」
「設立理念は3つあり、性的少数者の立場に配慮し、安心して利用できる医療サービスを提供する、性的少数者の生活を行政・NGO・医療機関など他の社会資源と協調しながら医療の側面から支援する、診療活動から得られた知見を当事者及び広く社会へと還元する、です。同性愛者のセックスは否定しません。安全にできる方向に持っていくことが大切です。写真入り男性向け性感染症パンフレットも作り、ホームページからダウンロードできるようになっています」
しらかば診療所
掲載元:ヨミドクター
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