同性愛者や性同一性障害など性的マイノリティー(少数者)が、一緒に暮らすパートナーの遺産を相続できなかったり、病気の治療方針の相談に加われなかったりするなど、「家族」としての権利が保障されない悩みを抱えている。
福岡、熊本両県には官公庁などへの書類作成業務を支援しているグループがあり、毎日のように相談が寄せられている。海外では異性でなくてもパートナーの法的保障を認める動きが広がっており、支援者らは国内での論議の活性化を期待している。
憲法では、婚姻について両性の合意のみに基づいて成立すると規定し、同性同士や内縁関係の夫婦に遺産相続を認めていない。病院での治療方針の決定や葬儀の仕切りといった場面でも性的マイノリティーが想定されておらず、パートナーの入院や死別の際、「看護したい」「財産を残したい」と考える人は少なくない。
熊本市の女性フリーライター(38)には、3年前から交際するパートナーの女性(32)がいる。東日本大震災をきっかけに、「この先、何があるか分からない」と、今春、福岡市内から、女性が両親と暮らしている熊本に移住した。
ただ、女性の両親は2人の関係を知らない。このため、「相手が事故や病気で病院に運ばれ、面会を拒否されたり、看取(みと)れなかったりすることを考えると不安。家族としての法的な契約をしたい」と打ち明ける。
福岡県内では2007年、北九州市若松区の中橋優さん(36)ら4人の行政書士が、書類作成業務などを代行する「レインボーサポートネット」を発足させた。
これまで寄せられた相談は全国から1000件以上。年長者の戸籍に年少者を入れる養子縁組のほか、死亡後の財産管理などをパートナーに委任する公正証書遺言の作成などを代行している。熊本市の行政書士法人「WITHNESS」も、05年から同様の支援に取り組んでいる。
ただ、中橋さんは「家族や周囲から認められていないケースが大半で、仮に遺言を作成しても相続の際にトラブルになる可能性はある」と言う。フランスやイギリス、米国では00年頃から、健康保険や年金などの社会保障を含め、同性同士でも婚姻した夫婦と同等の権利を認める制度が整備されつつある。
性的マイノリティーの権利に詳しい大島俊之弁護士(大阪弁護士会)は「4月に同性愛者であることを公言した男性2人が東京都の区議選に当選するなど少しずつ理解が深まっている。国内でも法整備に向けた議論を進めるべきだ」と話している。(手嶋由梨)
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