今月11日、高齢を理由に2月28日で退位すると表明し、世界に大きな衝撃を与えたローマ法王ベネディクト16世(85)。法王職は伝統的に終身在位であるため、何かほかに理由があると勘ぐる声が広がっている。
約600年ぶりに生前退位を表明した、ローマ法王ベネディクト16世。イスラム教を「悪」だと名指ししたり、未成年者に性的虐待した聖職者に対する対応がひどく遅れるなど、法王としての業績はイマイチだったという見解を示すメディアも多い。しかし、だからといって突然退位する理由としては、あまりにも弱いのではないだろうか……。そんな憶測のもと、今、イタリアのメディアは真相を知ろうと躍起になっている。
イタリア最大の発行部数を誇る日刊紙「ラ・レプッブリカ」は22日、昨年、ローマ法王が3人の枢機卿(教皇の助言者たる高位聖職者)に対して、バチカンの裏社会を極秘調査するように命じたと報道。法王の元執事が法王庁の機密書類を盗み出したことを受け、あわててバチカンのダークサイドを調べるよう命じたのだと伝えた。ちなみに、この元執事は、盗んだ機密書類をメディアに渡しており、バチカンの「宗教腐敗」「横領」「派閥関係」「縁故主義」などが世間に暴露され、大きな波紋を呼んだ。元執事は裁判にかけられ、禁固1年カ6月の有罪判決が下ったが、去年の12月に法王の恩赦を受け釈放されている。
「ラ・レプッブリカ」によると、法王からの使命を受けて極秘調査をした枢機卿たちは、腐敗や横領だけでなく、バチカンの裏社会にはびこるゲイネットワークの存在を発見。このネットワークは、ゲイセックスを楽しむミーティングを主催していたとのことで、イタリアのヴィラ、ローマのサウナだけでなく、バチカンのビューティーサロンまでもが、ハッテン場になっていることが明らかになったという。300ページに渡る調査報告書には、バチカンの職員が疑われても仕方のない立場に置かれていること、恐喝されやすい、危うい立場にあると記されているとのこと。法王は2012年12月17日に、この調査報告書を受け取り、その内容に法王の職を退位する決断を下したと同紙は伝えている。
この報道を受けて、バチカンのスキャンダルニュースを多く取り上げてきている、イタリアの週刊誌「Panorama」は、「法王は陰謀には慣れている。しかし、バチカンの裏社会で、口にすることができないほどの関係がこれほどまで複雑に入り込んでいるとは思いもよらなかったのだろう」との見解を示した。
ローマ法王庁報道官は2月23日、「ラ・レプッブリカ」が報じたような事実はないと否定。メディアの報道の仕方や、その内容について抗議したが、バチカンのゲイネットワークに関することには触れなかったため、「ラ・レプッブリカ」の報道は正しいのかもしれないという意見が広まっている。
カトリック教会は性行為を、子孫を残すための大切な行為だとしているため、同性愛は罪深い行為だと禁じている。しかし、ゲイ聖職者は多く存在するとされており、少年に対して性的虐待をして逮捕される者も少なくない。3年前には「Panorama」が、ローマの聖職者たちのゲイライフをスクープ。パーティーをしたり、男性コンパニオンを教会敷地内に招き性交渉をする様子を隠し撮りし、大スキャンダルとなった。
しかし、それはすべてバチカン外で起こったこと。バチカンは聖なる場所であり、禁欲を守れない聖職者が足を踏み入れる場所ではないとされているのだ。そんなバチカンにハッテン場があり、性欲、金銭欲、権欲がドロドロと渦巻いていると法王が知ったとき、激しい脱力に襲われたとしても不思議ではないだろう。
法王ベネディクト16世は28日に退位した後、2カ月間は夏に利用しているローマ近郊のカステルガンドルフォの別荘で、その後はバチカンにある修道院で隠居生活を送るとのこと。次期法王は、3月中に選挙で選出される見通しとなっている。
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