■ゲイニュース:さらりとゲイをカミングアウト!『アマデウス』
――夢中になった映画やドラマに出演していた、あの人。パタっと見なくなったけど、やっぱり気になる~!! そんなアナタのために、サイゾーウーマンの海外特派員・JULIEが、噂のあの人の仕事からプライベートまで、現地で情報をかき集めてきました!
■今回のターゲット
トム・ハルス(『アマデウス』(1984年)のモーツァルト役など)
35歳の若さで他界した天才音楽家モーツァルトの謎に満ちた死を、嫉妬心の鬼となった宮庭音楽家アントニオ・サリエリの視点から描いた名作映画『アマデウス』。18世紀の華麗なるヨーロッパをそのまま再現したこの映画で、音楽の神から愛されたモーツァルトを演じたのがトム・ハルスです。
天才と崇められているモーツァルトですが、天真爛漫で品行が悪く軽薄であったと伝えられており、トムはその俗物的なモーツァルトを見事再現。ピアノの猛特訓を受け、ほとんどのシーンを代役なしで演奏。また、現代屈指の指揮者ネヴィル・マリナーから学び、お墨付きをもらうなど、役作りに果てしないエネルギーを投入しアカデミー賞にノミネートされました。
そして、この作品でチャーミングなイメージがついたトムは、演技派俳優として認知され世界的にブレイクしたのです。
トムは、ミシガン州のアナーバーで育ちました。「決められたルールに従うことを嫌い、自分でルールを決めていた」「自分でルールを決めたら、結果がどうなっても満足した」そうで、「みんなが勧めることを、選択したことはなかった」という、かなり捻くれた少年だったとのこと。
俳優になったのも、「お前が役者で成功するわけないじゃないか」と言われたからだと、インタビューで明かしています。
地元の小さな劇団のチケット売りからスタートし、フロリダやイギリスで演劇を学んだ後にニューヨークのブロードウェイに挑戦します。すぐにピーター・シェファーの戯曲『エクウス』の主役見習いとして採用され、9カ月後には舞台デビューを飾りました。
『エクウス』は、映画『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフが演じたことで有名になった作品。トムは初舞台でいきなりオールヌードを披露したのです。
「脚本は上手に書かれていたからね、別に奇抜なことをしているとも感じなかった。恥ずかしいとも思わなかったし」とのことで、テレビドラマに出演しないかというオファーが舞い込んできたものの、舞台をやりたいからと蹴ったそうです。
舞台で着実にキャリアを積み上げていったトムが、知名度を上げたのは1978年。ドタバタ青春コメディー映画『アニマル・ハウス』でさえない新入生を演じたことにより、ベビーフェイスのキュートボーイとして人気を集めるようになったのです。
続けて、何作か映画に出ましたが、「実年齢よりも若い役を演じたり、繰り返し童貞を喪失する役を演じるのは、何か違うと感じた」とのことで、活動の場を舞台へと戻します。「舞台ことが、自分の住むべき場所」と生き生きしたというトムは、その4年後に、映画界から再びビッグオファーをもらうことになります。それが『アマデウス』のモーツァルト役だったのです。
『アマデウス』で若い女性ファンを多く獲得したトムですが、「やりたい役を演じる」というモットーは崩さず、その後も、イメージダウンを気にせず興味を持った作品に出演しました。
映画は、『パックマン家の人々』(89)『フランケンシュタイン』(94)などに出演していますが、中でも『ニッキーとジーノ』(88)は「役者として満足できる作品だった」と自賛しています。この作品で、トムが演じたのは障害者。
弟役のレイ・リオッタとクランクインする6週間前から共同生活を送り「目に見えない兄弟の絆、空気」を表現できるようにしたり、障害施設に通い入居者と触れ合ったり、彼らについて医学的に学ぶなど、徹底した役作りをしたそうです。メジャーな賞には振り向かれなかったものの、作品は各映画祭で高く評価され話題となりました。
舞台では、1990年に映画化もされた『ア・フュー・グッドメン』でトニー賞を獲得していますが、トムは、『アマデウス』の1年後に出演したラリー・クレイマーの演劇『The Normal Heart』が印象的だと語っています。
この作品は、80年代を舞台にHIV・エイズ患者の苦しみを描いたもの。トムは、「『アマデウス』でボクに興味を持ったティーンの女性ファンや、舞台ファン、ゲイたち。タイプの異なるグループが、同じ空間に集い、同じものを見て、強烈な経験を受ける。すごくクールなことだって思ったね」とコメントしています。
その後、トムは演劇プロデューサーとしても活躍するようになり、2007年には『Spring Awakening』でトニー賞を受賞。昨年も『American Idiot』で同賞にノミネートされました。トムは長年、イタリア人アーティストのセシリア・エルミニと交際しているとゴシップされてきました。
「2人は極秘に結婚し、一人娘のアンニャが誕生している」とまで伝えられていましたが、2008年にトム自身がこのウワサをきっぱりと否定。「シアトル・ゲイ・ニュース」のインタビューで、「インターネットの世界って、結構ウソが多いよね。
ウィキペディアには誰でも書き込むことができるし、真実でないことも書き込めるしね」と皮肉りつつ、シングルであり、結婚歴も子どももいないことを明かしました。また「ゲイ俳優のリストに自分の名前が載っていることも、別にかまわない。自分はゲイだし、それでいいと思っているし」ともコメント。
実は、トムは同性愛者。知らない人も多いですが、別に隠してきたわけではありません。「『アマデウス』が大ヒットして、自分の私生活をオープンにする時がやってきたと思ったんだ。大々的にカミングアウトしたかったから。
パーフェクトなタイミングはいつかなって、見計らっていた」と述べており、「オスカー授賞式には、当時交際していたパートナーと出席したんだ。でも、注目されるカミングアウト計画はポシャってしまって」と爆笑。
「『The Normal Heart』でも、ラリーが発表会で"この役をゲイの役者に演じてもらうことは、とても意味がある"と発言したけど、記者たちは変に遠慮しちゃって、この時も取り上げてもらえなくて」と苦笑いしていますが、次第に「トムはゲイ」だと周囲に認知されたことに心地よさを感じていると明かしていました。
歴史上の偉大な人物を演じ当たり役となったため、「トムは一発屋」だという人も少なくありません。しかし、彼は「今でも、あの作品のレガシーは続いていると感じるね。DVDとかのおかげだよね」と語り、気に留めてない様子。舞台で成功を収め、業界から演劇の天才と呼ばれているためか、ドンと構えることができるのでしょう。
『アマデウス』で若々しくスリムなモーツァルトを演じたトムも、今年で58歳。貫禄のあるジェントルマンになり、多くの舞台ファンから愛され続けています。「一日12時間働くワーカーホリックだから、なかなか交際相手ができない」とぼやいていますが、これからも充実した演劇人生を満喫することでしょう。
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