[シネマトゥデイ映画ニュース] 今年のニューヨーク映画祭(N.Y.F.F 49th)で上映された、1980年代にゲイの活動家として知られたヴィトー・ルッソを描いたドキュメンタリー作品『ヴィトー(原題)/ Vito』について、ジェフリー・シュワルツ監督、プロデューサーのフィリップ・ハリソン、ヴィトーの弟チャールズ・ルッソと従姉妹のフィリス・アントネリスが語った。
同作は、映画『セルロイド・クローゼット』の基となる原作を執筆した作家で、さらにテレビ司会者、ゲイ活動家としても名をはせていたヴィトー・ルッソの波瀾万丈の人生を、彼がエイズで亡くなるまでを描いたドキュメンタリー作品。エグゼクティブ・プロデューサーとして、映画『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』や『ワルキューレ』のブライアン・シンガー監督が参加している。
後年、ゲイの人々に多大な影響を与えたヴィトー・ルッソを描くことになった経緯についてジェフリー監督は「ヴィトーは映画『セルロイド・クローゼット』の原作者だが、彼がかかわったもっと大きなスケールの出来事や、彼と親密にかかわった人物を描きたかったのが、この映画の製作のきっかけになったんだ。
さらにゲイの歴史上で重要な出来事となる、ストーンウォールの反乱、LGBTプライドパレード(ゲイ・プライド・パレード)、そしてエイズの危機など、すべての出来事に彼はかかわるだけでなく、その中心人物となって彼が活動してきたからでもあるんだ」と彼の活動に感銘を受けたことが製作に繋がったようだ。
(ちなみにLGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーのそれぞれの頭文字を取った略語)
ヴィトーについて、親しかった従姉妹のフィリスは「ヴィトーはゲイであっても、生まれてからずっと両親に愛されてきたわ。彼がゲイとして、いつ頃カミングアウトしたかは覚えていないけれど、スポーツをするよりはむしろ、図書館や博物館に通うことの方が好きだったわね。
彼が12、13歳の頃、周りの生徒が彼についてあまり良くない噂を流していたけれど、彼の両親は彼をそのまま受け入れ、無条件で愛していたわ」と家族に支えられていたことが、ヴィトーの大きな支えだったことも教えてくれた。さらにフィリスは「ヴィトーとの出会いが、わたしの視界を広げてくれたわ」と感謝した。
リサーチの過程についてジェフリー監督は「まず、ドキュメンタリー映画『ハーヴェイ・ミルク』や『セルロイド・クローゼット』を監督したロバート・エプスタインと連絡を取ったんだ。僕はこの『セルロイド・クローゼット』で、初めて映画の仕事に携わった。
そこでロバートと師弟関係になっていたために、ヴィトーの演説オーディオやインタビューなどの多くの素材をロバートから手に入れることができたんだ。ただ、ヴィトーの詳細な活動については、かなり後で知った。
唯一残念なのは、彼と親しかった人物やエイズで亡くなった人物にはインタビューできなかったことだ」と述べた後、ヴィトーの弟、チャールズが「これは映画内には含まれていないことだが、ヴィトーと親しかった女優のリリー・トムリンは、ヴィトーがエイズの末期状態に陥っていたときに、(ろくに動けない彼のために)数千ドルのチェックを長い間送っていたんだ。弟として感謝したいし、他の人にも知ってほしいんだ」として、これまで内緒にしていたことを明かした。
最後にヴィトーは、わずか44歳の若さでこの世を去ってしまったが、LGBT、GLAAD(Gay and Lesbian Alliance Against Defamation)、そしてエイズ撲滅運動のACT UPなどを通して、人々に深くゲイの社会を世間に伝えてきた。彼の人生を知ることは、人として生きる上で大きな財産になるかもしれない。
(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
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